登場人物について

ノエイン もうひとりの君へから見る、並行世界について知る

押さえておきたいのは

今回、記事を作成するにあたって改めてノエインをみたが、この作品は世界観もそうだが登場人物についてもよく理解しておかないと、何処かで混乱する可能性がある番組だなぁと冷静に思った。どうしてかというと、並行世界をテーマにしているせいか同じ登場人物が複数出てくるからだ。同じ時間軸に同一人物が存在する、なんて奇天烈なことではなく、並行世界における『別の時間軸に当たる自分』という意味でだ。最初に登場するカラスにしても、もしかしたらあるかもしれない未来の1つにあたる『後藤ユウ』本人であり、主要登場人物として重要であることに変わりはないが、それでも主人公の1人である後藤ユウとは、あくまで別人として見たほうが分かりやすい。

例えばこれでカラスも『後藤ユウ』としていたら、もう何がなんだかわからなくなってしまう。それは視聴者に対して喧嘩を売っているようなもので、見やすいアニメとは言いがたい。難しいことを考えるのが苦手で、アニメなんてただ理屈や理論などをふっ飛ばしてみるべきものだと考えている人には少し難解かもしれない。それでもエヴァよりかは優しく出来ている、ただあまりに行き過ぎた展開となってしまうため、押さえておきたい登場人物を関係性くらいは知識として持っていると良いかもしれない。

なので、ここからは主要登場人物であるハルカとユウ、そしてカラスに焦点を絞って話をしていこう。

物語の構成

ハルカを中心とした物語構成

物語は龍のトルクと呼ばれる『上乃木ハルカ』を中心として展開されていきます。そんな彼女を守る役割を担っているのが、幼馴染である『後藤ユウ』であり、そして彼の一つの可能性である15年後の未来で成長した後藤ユウこと『カラス』だ。ハルカという存在はユウにとって大きな存在であることが、最初から最後までを通してみていくとよく分かるでしょうが、最終回ではまさかの展開が待っている。

ネタバレ全開で行きますが、そもそも敵であるシャングリラ時空を率いている『ノエイン』と呼ばれる存在は、他でもないまた別の可能性である未来のユウ本人だったのだ。そう、この物語で戦争を仕掛けてきたシャングリラを統括していたのはユウであり、彼は彼の目的のためにハルカを求め、龍のトルクとしての彼女と同化することにより目的を達成しようとする。ただこの事実を現代のユウはもちろんとして、カラスでさえまさか自分が敵とは知らなかった。

ただノエインと呼ばれるユウは姿なき実体の人間であったため、存在が非常に不安定だったこともあり、終盤にはカラスを同化することでようやくユウとして確立することが出来たという。まさかの主人公を守る少年が黒幕的存在だったというのは、皮肉な話だ。ハルカを守っているはずの自分が、別の可能性である自分から命を付け狙われるなど滑稽だ。

ユウからしたハルカという存在

この作品でのキーパーソンはハルカ、と言いたいところですが、個人的にはユウを中心にして見ていくといいだろうと考えている。すべての可能性の中で、後藤ユウという人間は『上乃木ハルカ』、あるいは『龍のトルク』と呼ばれる彼女を欲している。現代のユウは彼女がいることに心の支えを感じており、ラクリマ時空において既に存在しないハルカの面影を持つ現代のハルカを守ろうとするカラス、そしてシャングリラ時空ですべてを壊しても、かつて失われてしまったハルカを取り戻すために策謀する『ノエイン』。

三人を結ぶのは一人の少女であるが、三者三様に求めている『ハルカ』とはそれぞれ異なっている。簡単にまとめると、

  • 現代のユウ=上乃木ハルカという小学6年生の少女
  • ラクリマ時空のカラス=かつていたはずのハルカと呼ばれた女性
  • シャングリラ時空のノエイン=眼の前で助けられなかったハルカという少女

このようになっている。一見すると同一人物に見えるが、それぞれの時空に存在しているハルカはあくまで並行世界それぞれのハルカで、同一人物だと認識することは出来ない。カラスが初めて現代に来た際にも、龍のトルクとしてのハルカを見た時には『自分の知るハルカとよく似た少女』として見ているのが良い証拠ではないだろうか。後に味方にはなるものの、それでもカラス本人が知るハルカとは違うことを彼は理解している。

けれどノエインにすればハルカも龍のトルクも、自分が存在する時間軸で既にいないはずの人と同じ人物として見なしている。これはノエイン、つまりその時間軸のユウがかつて不慮の事故によって、眼の前で助けを乞うたハルカを助けられなかったことへの絶望から、ハルカという存在を欲するようになる。例え自分が知るハルカと違っていても構わない、彼女が自分と一緒にいればそれでいいとする、そんな執念すら感じさせる。

正義か悪かで言えば

明確にノエインを悪として定義していますが、彼は彼の目的のために動いていた。ハルカとまた一緒にいたい、自分からハルカを奪った可能性そのものを憎むようになった彼の取った行動は、奇しくもあらゆる可能性に存在するハルカを苦しめるようになってしまう。ユウ本人にすれば別の自分がハルカを苦しめていたと知るなど、慟哭を発する程に信じがたい絶望的な状況だろう。ただそれもノエインのエゴであり、現代のユウとラクリマ時空のカラスにすれば受け入れがたい事実だ。

最後には、ノエインはあらゆる可能性から構築される世界から拒絶されて消滅してしまう。主人公格として描かれる少年にすれば、後味の悪い結末と言っても良い。カラスですら、元の世界へ返すためにユウとハルカを送り出した際に消えてしまうが、後に残された現代軸のユウに命題を残す形となる。並行世界をテーマにしていると、主人公の別の側面も垣間見れるのは面白いかもしれないが、区別できていないと混乱してしまう。ただそれでも正義か悪かと二分するのは難しい、そう感じた。